ミャンマーでの外国人土地所有

ミャンマーでは、日本人や日本企業は事実上、土地を所有(厳密に言えば、土地使用)することはできません。これは不動産譲渡制限法によって外国人の不動産の取得に規制がかかっているからです。不動産譲渡制限法は、もともとミャンマー政府が没収した土地について強制帰国させられたインド人から保護するという歴史的経緯から制定されました。現在では、実質的に、外資系企業のミャンマー国内の市場参入を防いで自国の産業を保護する役割を果たしていると見ることもできます。

もっとも、外国の企業は、代わりに政府や民間から土地使用権を賃借して土地を確保することが可能です。外国人または外国会社に対して 1 年を超える賃借権は認められないのが原則ですが(不動産譲渡制限法 5 条)、これには例外があります。

この点について、日本貿易振興機構ジェトロ)は、次のような情報を掲載しています。

外国人(法人も含む)の土地所有は不可。代わりに、土地使用権の賃借により不動産を確保する。土地はミャンマー政府、または民間から借り受けられる。

外国企業の場合、土地・建物の賃借期間は原則として1年を超えることは認められない

投資法に基づくMIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可を取得した外国企業は、土地または建物を最大50年間賃借することができ、さらに10年間の延長が2回可能(最大70年間)となっている。
経済特区法の投資許可を取得すると、50年間の土地賃借、さらに25年間の延長(最大75年間)が認められる。

これら以外の外国企業の場合には、原則どおり1年ごとの賃借契約が必要となる。比較的小資本で始められるサービス業、例えば、法務、会計事務所、ITオフショア開発を行う会社などは、この形態で現地法人(子会社)を作る例が多い。

一方、「1年以上の土地・建物の使用が必要」となるような製造業・ホテル業の場合、投資法に基づくMIC許可または是認(Endorsement)および土地権利認可、または、経済特区法に基づく投資許可を取得することが事実上必須となる。

(日本貿易振興機構「外資に関する規制」2019年10月31日)

MIC許可とは

「MIC 許可」とは、投資家により提出された投資のための提案に関する、ミャンマー投資委員会の承認が記載された命令のことをいいます(ミャンマー投資法第1章2(j))。また、「是認」とは、投資家により提出された是認(Endorsement)申請に関しミャンマー投資委員会が付与する命令のことです(同章2(l))。いずれもミャンマー投資委員会の承認を意味します。

MIC 許可は、投資家がミャンマー投資委員会に提案を提出する時に、当該提案がミャンマー国の利益に資するものであり、適用法に準拠したものである場合に発行されます(25(c))。つまり、投資委員会が、(1) ミャンマー国の利益に資するか、(2) 法律に準拠しているか、の2点を判断するわけです。これに対して、是認は、是認申請が既存の法律に違反しない場合に発行されます(25(d))。

MIC 許可か、是認かの違いは、自社のビジネスが次に掲げる事業に該当するかどうかでわけられます。これらの一つに該当すれば MIC 許可が必要となり、該当しなければ是認があればよい、ということになります。

  • ミャンマー国にとって戦略的に重要な投資
  • 多額の資本集約的投資プロジェクト
  • 自然環境及び地域社会に大きな影響を及ぼす可能性のある投資
  • 国有地及び国有建物を使用する投資
  • ミャンマー投資委員会に対する提案の提出が必要であると連邦政府に指定されている

いずれにせよ、1年を超えた土地使用権を得るためには投資委員会の承認が必要になりますが、MIC 許可の方がミャンマー国への影響が大きいので手続として重くなっているということです。

<Myo Than Swe  / Shota Hiratsuka / Maki Shimoji>