はじめに

今回からは、ベトナムでの時効の管理についてお話しします。

日本と比べると、債権を失うまでの期間がとても短いことが特徴的です

f:id:oedo-law:20200416224112j:plain

ベトナム法における「消滅時効」の制度

ベトナム民法 (No. 91/2015/QH13)では、時効について、

民法149条(時効) 

1 時効とは、法律が規定する期間であり、この期間が終了した時に法律が規定する条件に従って主体に法律効果が生じるものである。 

と定義されています。

そして、時効の種類として、①民事権享受時効、②民事義務免除時効、③提訴時効、④非訟事件解決請求時効があるとされていますベトナム民法 150 条各項、ベトナム民訴法 184 条 1 項参照)。

このうち、未収金の時効管理において実務上重要なのは、③の「提訴時効」になります。

民法150条(各種時効)

3 提訴時効とは、侵害された権利及び合法的利益を保護するため、主体が裁判所に対し、民事事件の解決を請求するため提訴することができる期間である;当該期間が終了したときは提訴権を失う。

そして、契約に関わる提訴時効については、具体的に、次のようなルールとなっています。

民法429条(契約に関する提訴時効)

裁判所に対し、契約紛争の解決を請求するための提訴時効は、請求権を有する者が自己の権利又は合法的利益が侵害されたことを知り又は知るべきであった日から3年である。

 

ベトナム商法319条(訴訟提起の期限)

商事係争において適用される訴訟提起の期限は、・・・、法律上の権利又は利益に対する違反が発生した日から2年以内とする。

「商事」というのは営利目的がある場合をいいますので(ベトナム商法3条1項、2条参照)、海外ビジネスの場面では、「商事係争」にあたるとして、2年という期間が適用されます

日本の新しい民法では、未収金の消滅時効は5年でしたが、これと比べるとかなり早く権利が消滅してしまうことになりますので、うっかり時効期間が過ぎてしまうことのないよう、ご注意ください。

<Shota Hiratsuka / Maki Shimoji>