コーヒーブレイク

相談事項について

ベトナム現地メディアの記事で、次のような変わった法律相談がありました。

逮捕されたらどのようにして刑務所から脱出しますか?

(Hình phạt nào cho tội phạm vượt ngục?)

プリズンブレイクの仕方を教えてほしい、というのです。

これに対する現地弁護士のアドバイスは・・・

脱獄(拘置所からの脱走)という行為については、行為者の目的を考慮して、適正な犯罪とそれに対応する刑罰を決定しなければなりません。

まず、身柄を拘束されている場合、拘留されている場合、押送されている場合、裁判にかけられている場合、懲役刑に服している場合は、刑事法典2015年(2017年改正・補充)第386条により、違反の重大性に応じて、6ヶ月以上3年以下の懲役に処せられます。

組織的犯罪や警備員に対する武力行使の場合、3年以上10年以下の懲役刑に処せられます。

次に、留置施設を破壊しようとしたり、留置施設から逃走しようと組織したり、被留置者や被押送者を脱走させたり、留置施設から逃走させたりした場合、人民行政に反した場合、刑法119条により10年以上20年以下の懲役または終身刑に処せられます。

逃亡行為が軽罪と判断された場合、罰金のレベルは3年以上10年以下の懲役、犯罪を犯す準備をした場合は1年以上5年以下の懲役刑に処せられます。

(Hình phạt nào cho tội phạm vượt ngục?) 

淡々と、脱走関連の犯罪と刑罰について説明しているのが何ともシュールです。

ベトナム刑法386条は、次のとおりです。

第 386 条 留置場、拘置所から逃走又は押送中、裁判中に逃走する罪
1. 暫定留置、勾留、押送、裁判中又は懲役判決の執行中の者が逃走したときは、6 か月以上 3年以下の懲役に処す。
2. 本条第 1 項の行為を行い、更に以下の場合のいずれかに該当するときは、3 年以上 10 年以下の懲役に処す。
a) 組織的である場合
b) 警備する者又は押送する者に対して暴力を用いた場合

そういうことですので、仮に刑務所に入れられて脱走したときは、もちろんそれ自体に刑罰が科されます。一応日本法の場合と比較してみますと、日本では1年以下の懲役となっていますので(日本刑法97条)、ベトナム法のほうが法定刑が重いですね。

ちなみに、逃走援助についても、日本法では暴行を働いたというケースでも3月以上5年以下の懲役ですが(刑法100条2項)、ベトナム法ではこれに比べてかなり重く、10年以上20年以下の懲役又は終身刑です。

脱走が国家の威信に関わることを重視して、重めの法定刑を設定しているのかもしれませんね。

今回のテーマは、現実的にお役立ていただける事例にはならないと思いますが(そのようにならないことを祈ります)、ちょっとおもしろかったので取り上げさせていただきました☕

<Shota Hiratsuka / Maki Shimoji>